「山月記」の場面分けが難しい

 5組での授業。「山月記」の2時間目。最初に「人が他のものに変身する話」の別の作品を挙げさせて、変身譚の広がりと意味合いについて考えさせた。このクラスでもジブリ・アニメがたくさん挙げられたなぁ。その中で「ピノキオ」という回答があった。これは意表をついた、いい意見だった。
 その後、小説全体の場面分けをする。8組での混乱を反省して、7つに場面分けをする、その1、2段落と7段落の区切りは指定し、3〜6段落の区切りのみを考えさせる。さらに、そこは李徴の独白であることを示し、李徴の独白が4種類あることをも示す。途中にはそれぞれの独白の内容についても示した。そこまでやれば、自ずと問題は「時に残月冷ややかに」などの情景描写の部分を前の段落に含めるか、あるいはそこから新しい段落が始まるか、というものに絞られてくる。
 しかし、この課題は「問題」にならないのだ。生徒の回答は「全員」が、そこから新しい段落が始まる、とするものである。情景描写の部分を前の李徴の独白に続けさせると考える生徒は皆無である。だから「問題」にならない。解釈の妥当性について討論させることができない。それで結局、こちらの方から「こんな考え方もあるよ」と言って、情景描写を前に続けさせる分け方を示すしかない。非常に、おもしろくない。
 実を言えば、私もこの考え方には疑問を持っている。一応、この分け方が妥当である理屈付けは自分で考えられるものの、それが本当に妥当なのかどうか心許ない。我々が今年使っている教科書は明治書院のものだが、なぜ指導書は李徴の独白から新しい段落を始めるのかなぁ。情景描写から始めない、何か正当な理由付けがあるのだろうか。質問してみようかな。
 というわけで、しばらくはつまらない授業をしております。