「山月記」の授業

 9組での2時間目。だが、歯科検診に引っかかり、前半の半分が授業できなかった。ほんの30分程度でできるのは、「人間が他のものに変身することと類似した話は?」という課題の確認だけであった。生徒からは「千と千尋の神隠し」「崖の上のポニョ」「猫の恩返し」「紅の豚」などのジブリ作品がたくさん挙がった。確かに、考えてみるとジブリ作品は変身するものが多い。変身しないのは「ナウシカ」「ラピュタ」「魔女宅」「耳すま」「もののけ」あたりだろうか。だが、彼らが挙げたのは変身が物語の主要な部分を占めているものではなかったり、異種のものが人間に変身したりするものだったりする。そこで、「人間が」という点を強調してもう一度考えさせた。すると「ハリー・ポッター」などが挙がってきた。そのあたりで、変身することのプラス面とマイナス面とを考えさせた。いろいろ挙がってきて、面白いね。
 生徒が「山月記」を読んでの質問をプリントに書かせ、それを回収した。生徒の質問をざっと見てみたが、なかなか鋭いものが多い。「何故『虎』に変身するのか?」とか、「袁傪が不思議と思わずに虎となった李徴と話をするのは何故か」など、こちらが考えて欲しいポイントのほとんどが挙げられている。やはり生徒の質問力は高い。ただ、それはクラス全体を見た場合であり、一人一人を見ると、鋭い質問をいくつもあげたのはせいぜい一人くらいである。ここに「読みの交流」を行う意義があると考えら得る。自分が気づかなかったことを同世代の他の者が気づいている、この事実が人を新しい認識へと導くだろう。