『雲のむこう、約束の場所』

雲のむこう、約束の場所

雲のむこう、約束の場所

 新海誠による同名の映画のノベライズである。これは監督自身ではなく、他の人が書いている。
 この本を読むことによって、映画のディテールがようやく理解できた。冒頭の、浩紀が一人で廃駅を訪れる場面、佐由理が突然彼ら二人の前からいなくなった衝撃、彼女の眠りの理由、浩紀が東京で生活する描写での、新しい彼女らしい人物との関係、ウィルタに拓也が加入し、活動している理由、そして塔へ佐由理を連れて行った時に、彼女が覚醒するいきさつ、それらの映画では示唆程度でしか語られなかったことが全て理解できた。さらにこの本では、佐由理が覚醒した後の、三人の足跡まで語られている。これにより、ようやく冒頭のシーンの意味が理解できる。だが、それはずいぶんと寂しいことだ。
 うーん、映画を観終わった時の、余韻の残る感情と、小説を読み終わった後の、全てが理解できた明晰さと、どちらも必要なのかな。映画を観て、小説を読むという順番が崩さないことが肝要である。
 これは、『ほしのこえ』の小説版も読まなきゃいけないかな。(^^ゞ