新任者引き継ぎ会の横で

 今日は、4月から赴任する新任者が本校を来訪し、引き継ぎを行う日である。その会が行われている横の小部屋で、我々は別の会議にいそしんでいた。新1学年の担任会である。そろそろ解禁してもいいだろう。そう、私は新1学年の担任になるのである。
 3年生を卒業させてすぐに1年生の担任になるというのは、本校ではままあることである。事実、私の他に2人が、3学年として同じく卒業生を出し、また1学年の担任になる方がおられる。まあ、そのうちの1人は特殊な担任のなり方をするが、私もかなり特殊だろう。3年生を終えてすぐに1年生の担任になるのは、これで2度目である。つまり、私は3回目の担任なのだ。
 私は本校に赴任した時、1年生の副任だった。翌年、担任の異動がらみで2年生の担任になった。そのまま3年に上がって最初の卒業生を出した。そしてすぐに1年生の担任となり、3年間担任をした。そしてまた、1年生の担任をするのだ。合計で6年間連続担任である。おそらく来年もそのまま持ち上がるだろう。新潟県では同一校8年までというルールがある。したがって、私は本校に在職する8年間の間、7年間を担任として過ごすことになるはずである。まあ、極めてまれなケースだと言えるだろう。
 正直に言うと、今回担任になることは、ある程度私の予想内のことではあった。でも、いざそのことが現実となり、先月あたりから新1学年の会議に出席しつつ、3年生の受験指導やら卒業準備やらを行っていた。そして、3年生を卒業させ、昨日離任式を迎えて、多くの卒業生たちと会えた。それら一連の出来事が、私には非常に切なく、苦しく感じた。今回はものすごく引きずっているのである。3年生が卒業してしまったのが寂しくてたまらない。前回卒業生を出した時も、寂しくて寂しくてたまらなかった。今回は、その時と同じくらい、いや、あるいはそれを上回って、寂しくてたまらないのだ。その余韻にしばらくは浸っていたい、というのに、今回は前回よりも日程が立て込んでいて、次から次へと新1年生のための準備作業が入ってくる。もう、どんどん卒業生たちと引き離されていくような気がして、たまらない。ここしばらくは、本当に気持ちが切り替わらなくて、申し訳ないくらいであった。
 それでも、新任者たちが引き継ぎに来た。異動する同僚たちが同様に引き継ぎを終えて、新しい職場の様子を話してくれる。私は仕事に手詰まったので、身辺整理に取り組んだ。生徒たちの個人情報満載の紙をシュレッダーにかける。それらの作業をしているうちに、新しい年度が始まるのだ、という気持ちが次第にしてきた。やはり、環境が変わることは気持ちを変えるきっかけにもなるのだね。
 まだまだ、気持ちは切り替わっていかないだろう。まだしばらく時間がかかるだろう。仕方がないじゃないか。3年間、ずっと一緒に濃密な時間を過ごしてきたのだ。その生徒たちとお別れしたのだから、そう簡単に吹っ切れるものではない。特に私はその傾向が強い。それを素直に認めて、でも少しずつ新年度の準備を進めていこう。卒業生たちの4月が新たな経験の始まりであるように、私もまた新たな経験をするために準備をしていこう。彼らが成長していくように、私も少しでも成長していこう。