『蒼路の旅人』

軽装版 蒼路の旅人 (軽装版 偕成社ポッシュ)

軽装版 蒼路の旅人 (軽装版 偕成社ポッシュ)

 「守り人」シリーズ第7冊目。今度はチャグム皇太子の物語である。チャグムが罠と知りつつサンガル王国の救出に向かい、その中でタルシュ帝国にとらえられ、その都に行き、そこで故国新ヨゴ皇国を属国にするという使命を帯びて帰され、その帰路で、第2の解決の道を求めて新しい歩みを踏み出す姿が描かれている。これまでにない、なかなかに重苦しい世界である。全編のほとんどが海の上での話だし、海の上というのは船以外の世界がないからね。しかもチャグムはその半分くらいは捕虜として連行されているので、なおさらだ。しかし、その中で彼は皇太子という運命に抗うものではなく、故国の人々の幸せのために自らの選び取れる道を行く者へと変化を遂げている。確かに、この本のラストシーンは、暗鬱な雰囲気が立ちこめる中にあって、一筋の光のようである。
 物語もいよいよ最終の話に入ってくる。楽しみである。