『虚空の旅人』

虚空の旅人 (新潮文庫)

虚空の旅人 (新潮文庫)

 「守り人」シリーズの読書は続いている。これは4作目。主人公がバルサから新ヨゴ皇国の皇太子となったチャグムに変わっている。バルサは全く登場しない。作者も、これは外伝になるなと思いながら書いていたが、逆にこの作品が書かれることによって、このシリーズが10巻ものの大長編へと発展していったんだそうな。本作を読む限り、まだその展望は得られないが、この話が「守り人」シリーズとどう関わっていくのか、楽しみに読み進めていこう。
 チャグムは皇太子の職務を守りながら、同時にその職務に縛られるのを苦しく思っている少年である。その彼がどのようにして巻き込まれた事件を解きほぐしていくのか、なかなか話は動かなかった。しかし、前作で魂となって駆けめぐった体験を活かして事に当たったのは意外でもあり、また面白かった。皇太子でありながら魂の闘いをするわけだ。この、立場にそぐわない働きをした彼が今後どうなっていくか、楽しみである。
 解説にあるように、この「守り人」シリーズは男女の性差が反転させられているという指摘には、なるほどと思った。さあ、これが次作でどう展開されるのか、楽しみである。