『日本辺境論』

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

 内田樹の最新刊である。著者のblogで、ご自身が「面白いよ」と書いておられたので、楽しみにしていた本である。今回も速読を少々意識して、速く読むようにした。それでも内容はしっかり理解できたつもりである。
 うん、面白い! ご自身の宣伝通りである。日本人論なのであるが、凡百の日本人論とは一線を画する、非常に刺激的な日本人論である。先達の様々な発言をくり返しただけ、と書いておられるが、それでも著者の体を通った、斬新で認識を新たにさせられる見解であった。
 日本人論ではあるが、後半はほとんど「学び」論である。著者の最近の様々な本に書かれている「学び」についての考察がまとめて記されているような気がする。学びというのは何を教えてくれるかわからない人を師として、その師から学ぼうとする時に成立するものだ、という。そこで、この人は何を教えてくれるのかわからないから教わろうとするのであり、何を教えるのかわかってしまったらもはや「学び」は成立しない。そこで、現今の教育界の動静を批判する。
 そして、辺境人であるからこそ、日本人は最も効率的に学びを発展させてきた、と言われる。昨今の教育の問題点は、この「何かわからないものを事前に洞察する力」を枯渇させている、つまり、かつての学びの伝統を途絶えさせてしまったことに起因する、という指摘は考えさせられる。そこから、どんな教育を今後は展開すべきだろうか。私に与えられた課題である。
 ともあれ、本当に刺激的で、ページを開くたびに毎回非常に面白かった。また、いろいろと考えさせられる本であった。