評論「自然の抑止力」の授業

 1組での授業。「自然の抑止力」という評論を読む。しかし、この評論はかなり問題のある文章である。というのは、分量は教科書で6ページほど、全15段落あるのだが、内容の半分くらいはチョウの行動についての説明の部分である。さらに半分くらいはその行動についての解釈である。そして、最後の3段落がそれらの考察を受けての筆者の主張が現れる部分だが、筆者の主張が明確に現れるのは最後の1段落のみである。すごい文章だ。しかも内容は分かりやすく、行間を読まなければならないということはあまりない。このような教材を相手に授業を展開する場合、要約をさせることが最大の学習活動になるだろう、と思う。ただ、要約をするとなると、実は多少やっかいな文章でもある。筆者の主張が最後の段落にのみ現れるので、それまでの部分をいかにまとめるか、あるいはいかに切り捨てるか、ということが問題になる。これは個人作業よりもグループで協働しながら作業を進めた方が良いだろう、と考えた。
 そこで、以下のような作業手順を考え、生徒を図書館に呼んで授業を行った。

個人作業

  1. 文章を読み、要約をまとめる上で重要な箇所に傍線を引く。

グループ作業

  1. 付箋に傍線を引いた箇所を手分けして書き写す。
  2. 付箋を別の用紙に配置し、傍線や矢印でその関係を示して、文章構成図を作成する。
  3. 作成した文章構成図を参考に、代表が要約(要旨)文を作成する。
  4. グループ全員で作成された要約文を修正する。
  5. 文章構成図および要約文を提出する。

 結果として、半分ほどのグループが文章構成図の作成までで終わってしまった。また、要約文を作成し終えたグループも代表が作成したものをそのまま提出したものが多く、グループ内で修正を加えてはいないようだ。時間が足りなかった、と言えるだろう。そうではあるが、非常に活発な話し合いと協働が見られた授業となった。文章構成図の作成の部分でグループでの協働がとても活発になった。あるグループは最初から話し合いを初めて作業を進めていくが、あるグループは初めに付箋作りを淡々と行い、次にその付箋の配置をグループで話し合うというやり方で作業していた。それぞれのグループの個性が出た、お互い同士の工夫や特性が活かされた活動になっていたと思う。
 この授業は教育実習生が参観していた。その実習生が、「これは難しい課題ですね」と言っていた。そうだろう、文章構成図を作成し、しかも要約文をグループで話し合いをしながらまとめるのだから。しかし、難度の高い課題だからこそグループの力が生きる授業になるだろうと目論んでいた。そして、上記の手順を示すだけで、あまり具体的な指示をあえて与えないことで、生徒自身が自分たちでやり方を工夫していってくれるだろうと期待もしていた。どうやら生徒たちはこちらの期待通りに動いてくれたようだ。
 この授業はiPhoneで写真をバンバン撮った。これらを見てみると、一つのグループが時間の経過とともにどのような行動をしていったかが分かると思う。これにより、彼らがどのような学習を進めていったか、また、どのような支援が学習を促進するのに役立つか、ということを考える材料になるだろう。
 私自身にもいい考察材料を与えてくれた授業だった。