「夕顔」の授業

 4組での授業。夕顔が取り殺される場面である。
 今日は最初に、今回の場面で心内語の部分を探させ、(  )で括らせることをさせた。これにより、本文をよく読ませることが目的である。同時に、心内語の特徴についても話をする。
 次に、夕顔の死に対して源氏が思っている箇所をどのように表現しているかを着目させ、3カ所を抜き出させる。以下の3カ所である。

  1. せむ方なき
  2. 言はむ方なし
  3. やる方なき

この表現の変化はすごい! 最初は「どうしようもない」ということだ。次は「言うこともなくなってしまう」ということだ。最後は「自分の悲しみをどこかへ持って行く、その所もない」という意味だ。次第に悲しみが深まり、しかもそれが源氏自身の心の中に深まり入っていくことを示している。うーん、さすがは紫式部である。上記の3カ所を生徒に探させて、その意味は私が説明した。
 これらの2つの作業をした後で、本文を短く区切ってどんどん指名し、訳させる。15人くらいには当たっただろう。その最後で、いよいよ紙燭が持ってこられた時に、夢で見たのと同じ顔をした女が夕顔の枕元にいて、それがふっと消える、という描写に当たった。それを訳させた後で、すかさず別の生徒に

「この女はいつから夕顔の枕元にいたの?」

と発問する。この発問はなかなか「ぞっ」とする。そう、生霊はあたりが真っ暗闇になっていた間、ずっと夕顔にとりついていて、彼女をさいなみ、そしてついに彼女を死に至らしめたのだろう。源氏が必死に夕顔を介抱しようとしていた間中、生霊は夕顔を苦しめていたのだ。
 生徒もその意味に気づいてくれたらしい。チャイムが鳴るまっただ中だったのだが、一瞬教室が凍り付いたのが感じられた。
 古典講読は面白い! 古典のすばらしさを多少は教室の中で紹介できそうである。