「舞姫」の授業:『教師の言うことを真に受けるな!』

 1組での授業。文系は進む進む! でも、4時間目にしてようやく第1段が終わったのだが……。
 最初に前回の「豊太郎の悲しみ」についてまとめる。すでに配っていたプリントの問題形式とは違った授業の進め方をしたので、もう一度整理し直してやる。その後で、冒頭の一文「石炭をばはや積み果てつ。」の意味合いについて、リーダーレスポンスをさせる。ノートをすぐ集め、書いたことにはとらわれずに自由に「石炭」からのイメージを発表させる。

  • 黒い → 一点の翳へのイメージのつながり
  • 暖を取る
  • 四角(?)→ ゴツゴツしている
  • エネルギー
  • 船の動力

などが挙がってきた。
 私の授業では、このように生徒の挙げたイメージを板書しておき、それを見ながら私が自由に解説を加えたり、イメージを膨らませたりすることがよくある。これらの中で、「黒い」というイメージは私の気づかなかった鋭いものだと思った。「四角」はどうしようかな?(^_^;)
 「エネルギー」「動力」という言葉から、新国家としての近代日本の胎動という意味合いを説明する。そして、そこへ帰っていこうとしている豊太郎は、近代国家で官僚として活躍し、立身出世が期待されているということを説明した。そして、その彼が「人知らぬ恨み」を抱いているわけだが、何故「人知らぬ」のかを考えさせた。この「人」とは自分と同じ、ヨーロッパからの帰国者のはずである。そして、自分と同じ、高級官僚として新国家で活躍するという野望を抱いている者たちのはずである。そうした者たちへ、自分の弱点となる経験を語れるはずがない。というのが、私の解釈である。
 これを説明した際、次のように語った。

「現代文の授業を受けて、予習や復習で現代文の力を伸ばしたいと思うならば、どうしたらいいですか? 答えは簡単です。それは『教師の言うことを真に受けるな!』ということです。授業で教師が言った説明をそのまま鵜呑みにしてしまうのではなく、自分で『本当だろうか?』と本文を読み直し、自分で考え、答えを書いてみる。その上で教師の言ったことと同じならばそれで良し。もし違うならば、どうぞ私に話しに来てください。私は、そうした意見は大歓迎です。
 また、こうしたことが大学の文学部で行われていることです。大学の文学部では、様々な人の論文を読み、ゼミで討議して、他人の考えを理解した上で、『それは違うだろう』という自分の意見を持って議論するのです。よって、今、授業で行っていることこそが『学問』なのです。
 『僕の言うことを疑え!』これが、現代文の勉強法です。」

 本校の生徒は素直なので、皆神妙に聞いていた。さて、どれだけの者が実践してくれるかなぁ。