『源氏物語ものがたり』

源氏物語ものがたり (新潮新書)

源氏物語ものがたり (新潮新書)

 源氏物語の研究史を概観できる書である。紫式部によって書かれた源氏物語だが、その後で定家が本文を確定し、四辻善成がモデルを特定し、一条兼良が諸説を分類し、宗祇、三条西実隆、細川幽斎北村季吟本居宣長らの注釈が続き、アーサー・ウェイリーが美しい英文に訳した。彼らの業績を簡明に押さえて紹介されている。
 もっとそれぞれの人物の業績やその作業について突っ込んだ叙述が欲しいなと思った。しかし、源氏物語がいかに特別な作品であるか、そしてそれを研究してきた人々の研究がいかに素晴らしいものであるかを理解することが出来た。
 ウェイリーによる訳文は確かにいいね。夕顔巻の部分が英文で出ているので、生徒に紹介してみようか。