卒業生が来てくれた

 夕方、久しぶりに卒業生の来訪を受けた。Mさんである。他のクラスだったKさんと一緒に。離任式だということかな、教務室に顔を出してくれた。
 Mさんが来てくれたのは久しぶりだ。昨年の冬以来かな。それまでは在学時とあまり変わらない姿だったのだが、今回は少し姿が変わっていた。最初は誰だか分からなかったよ。今回は二人を教務室の中に招き入れて、じっくり小1時間ほど話をする。
 彼女は充実した学生生活を送っているようだ。勉強もしっかりやっているようだし、凍った湖の上で氷に穴を開けてカワハギ(?)釣りもしたそうだ。食べ物のおいしいところに彼女は行っていて、それらも食べに旅行したという。いいねぇ、学生生活は。いろんな経験をするといい。それが自分自身の器を大きくする。Kさんはアメリカに旅行をしたそうな。それまた素晴らしいことだね。
 そしてMさんは、「先生、私、本を読むようになりましたよ」と嬉しいことを報告してくれた。実は彼女は国語に悩んだ者で、読書もあまりしていなかったそうだ。でも、最近本を読むようになり、その面白さに「今更ながら」(本人談)気づいてきたそうだ。まだ読書量はたいしたことはないが、それは大きな進歩である。彼女が進もうとする道は言葉の力が必要とされる道である。言葉によって苦しむ人を励まし、時には辛い現実を理解させなければならない。そんな時、ありきたりの言葉ではなく、自分自身の中に蓄積してきた言葉によって、自分自身の血の通ったいのちのある言葉を届けなければならない。そのためには、本を読むことが必要不可欠なのだ。私の願っていたことの一つを彼女が実行していることを知り、とても嬉しかった。
 1時間くらい話をして、彼女たちは帰っていった。今年の3年生の合格先一覧の表を見たあと、私の方を振り返ってお辞儀をして出て行った。その後、懐かしい3年8組の教室(今は3年7組だが)を見ていったかな。礼儀正しく、また親しみを持ってくれる立派な卒業生である。今年は1月頃にKさんが来てくれたし、今日Mさんが来てくれた。卒業して2年が過ぎ、さすがに高校にわざわざ来てくれる者は少なくなった。それでも、たまにでも卒業生の来訪を受けるのは本当に嬉しいことだ。
 本当に今日は、嬉しいことがたくさん起こった。素晴らしい時を与えてくださったことを、心から感謝したい。