四面楚歌の授業

 6組と7組での授業。四面楚歌は項王の詩の解説から始まり、残り3文の解釈をさせる。その後で、虞美人が唱和したとされる詩を解釈する。2クラスとも「賤妾何聊生」の箇所に使われている句法を反語であると認識し、それにあわせた口語訳をしてくれた。いやぁ、嬉しいことだ。反語と見分けがつくことで、この詩はようやく意味を持つ。大変すばらしい。そして、虞がこの後どうなったかは分からないが、虞の墓には一輪の美しい花が咲き、その花を「虞美人草」という、と教えた。虞のその後はどうなったのでしょうね? 詩の内容からすると自害したはずなのだが、史記本文にはそのことは書いていないと思うのだが……。生徒が後で示してくれた「マンガことわざ辞典」には、虞が自害した様子が書いてあったけれどね。
 我々が使っている数研出版の教科書では、この後いきなり項王が烏江のほとりに立ち、亭長と会話をする場面へと移る。その間の、項羽の華々しい戦いの様子がそっくり割愛されている。「一つの教材を長めに採っている」のが売りのはずの教科書なのだが、これは少々いただけない。そこで、3年前に使っていた大修館書店の教科書をコピーしたプリントを作り、この省略部分を生徒に紹介した。そして、一人一文ずつ音読をさせた。生徒は上手に読む。初めて見る漢文なのだが、ほとんどが間違えることなく、また難しい読みの部分もほとんどちゃんと読んでくれた。もちろん教科書のコピーだから、読みやすいのは当然ではある。でも、難しい漢字もきちんと読めていた。たいしたものだ。読ませながら、所々私が解説を入れたり、ストーリーを押さえる上で重要な部分に傍線を引かせたりして読み進めた。話の流れはつかんでくれたんじゃないかな。
 漢文は音読だねぇ。こうしてどんどん読み進めていくと、漢文の流れも、ストーリーのおもしろさも分かってくる。国語教師ならではの至福の時であった。