『生命と食』

生命と食 (岩波ブックレット)

生命と食 (岩波ブックレット)

 福岡伸一氏の著作シリーズ第5弾。これは岩波ブックレットで、薄い本である。内容はこれまでの著作で触れられたことが多い。しかし、この本の冒頭には『生物と無生物のあいだ』の著作スタイルを取った理由が述べられていて、興味深かった。

 ではいったい、どのように生物学を語ればいいのか。…その結論は、自分の学んできた経験の中で語りなおす、ということです。(中略)
 そういった気づきの体験をもう一度語りなおせば、生物学がよりビビッドなかたちで読者に伝わるのではないかと考えたのです。(p.3)

 この意図は大当たりだったことがわかる。彼の著作はきわめてわかりやすく、イメージがしやすく、なおかつ興味をそそられる。その文体にはこういった思考があったのか、と気づかせられたことであった。