『『こころ』大人になれなかった先生』『「言語技術」が日本のサッカーを変える』

『こころ』大人になれなかった先生 (理想の教室)

『こころ』大人になれなかった先生 (理想の教室)

「言語技術」が日本のサッカーを変える (光文社新書)

「言語技術」が日本のサッカーを変える (光文社新書)

 机上の整理に悪戦苦闘しながらも、しっかり読書は進めております。
 『『こころ』大人になれなかった先生』は石原千秋が自らの『こころ』論を一般読者向けに分かりやすく書いたものである。彼の、テクスト論に基づく小説解釈は面白い。彼自身、「文学研究は読み取れる限界を提示することにある」とか、「小説の矛盾も、作者が間違えたと考えるのではない。そう考えるとすべてが終わってしまう。その矛盾を受け入れた上で、何が見えてくるかを考えるのが文学研究だ」などの発言がある。これは非常に良い。私が大学時代に、文学とは何を学ぶ学問なのかとずっと悩んで、とうとう結論が出ていなかった。それのある解答を示してくれて、心地よい。
 内容は、ほとんど再読に近いのだが、新たに気づかせられた箇所が多い。これを元に、今作成中の学習プリントを修正する必要が出てきた。
 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』はライティング・ワークショップに行った際に、同じメンバーから紹介された本。少しずつ読み進めたり、うっちゃったりしていた。
 言語技術の重要性がスポーツの面から教えられる。活用されているのは三森ゆりかさんの言語技術プログラムである。そしてディベート。やはりディベートは言語技術を引き上げる、圧倒的に有効な方法だなぁ。池田さんのブログを読んでいても、ディベートが大学生の指導に十分有益であることが分かる。
 本の内容は、エリート礼賛がやや鼻につく。そのエリートは弱者を思いやれる者だということは書いてはあるけれどね。しかし、ヨーロッパ的な教育環境を日本にも導入すべきという姿勢は、ある面で賛成である。少なくとも言語技術の必要性は確かであるから。