『プリオン説はほんとうか?』『もう牛を食べても安心か』『脳を活かす仕事術』

もう牛を食べても安心か (文春新書)

もう牛を食べても安心か (文春新書)

脳を活かす仕事術

脳を活かす仕事術

 福岡伸一氏の著作を集中して読んだ。『プリオン説…』は修学旅行出発直前に読み終わり、他の2冊は旅行中に読み終えた。何しろ行き帰りの電車の中は絶好の読書時空間である。
 『プリオン説』と『もう牛を』には重なる記述も多数ある。しかし、『プリオン説』の方は、狂牛病の原因として提案され、ノーベル賞まで取ったプリオン説に対する反証の試みである。また『もう牛を』の方は、シェーンハイマーの生物の動的平衡論を踏まえて、生物がタンパク質をとり続けなければならない理由や、消化の生物学的意義や、記憶の保持などの話題をふんだんに紹介しつつ、狂牛病に対する日本政府の対応への批判を展開している。
 ヒット作となった『生物と無生物のあいだ』は、シェーンハイマーの動的平衡論と、生物の自己複製についての話題を展開して、生物のあり方について論じたものである。氏の3冊は、基本的な考えの部分は同様の記述が使い回しされているものの、3冊のテーマはまったく独自であり、大変興味深いものであった。
 何しろ素晴らしいのがその文体である。科学者らしい精緻な論述と同時に、文学的な雰囲気も醸し出している。独特の、きわめて読みやすい文体だ。こういう文章こそ「評論文」として教材化できるものだ。
 『脳を活かす』の方は、O先生が紹介していたものをblogで読んで、それで読んでみた本。茂木氏らしい内容と、所々にはっとさせられる部分もあり、なかなかよかった。