「こころ」の授業

 4組での授業。ここでもまずはテスト返しと解説。このクラスでは解説後の質問はほとんどなかった。
 さて、後期での現代文は夏目漱石の「こころ」である。後期中間考査は11月末にあるが、それまでの授業時数が少ないクラスでは7コマくらいしかない。これは最初から「こころ」をやらざるを得ないでしょう、ということで、「こころ」に突入する。
 今回は全7、8コマの授業の約半分を使って、生徒自身に「こころ」の研究をしてもらうことにした。与えた課題は以下の通りである。

  1. 2〜4人のグループを組む
  2. 教科書所載の13章の中から1章を各グループで担当する
  3. グループ内で担当箇所について疑問を出し合い、それについて意見交換をする
  4. 意見や検討結果を研究レポートとしてまとめる

 『生徒の読んだ羅生門』という本がある。これは生徒に羅生門の1文を1人ずつ担当させ、その箇所について徹底的に疑問を出させ、話し合いで読み取っていこうとしたものだ。私が目指したものは、これの『こころ』版である。

生徒の読んだ「羅生門」―新しい解釈を求めて

生徒の読んだ「羅生門」―新しい解釈を求めて

 私の場合は生徒にグループを組んで取り組ませることにした。その方が生徒同士の話し合いの中で、自分自身だけでは気づかなかった発見が生まれるだろう、と考えたからである。またこれは、文学研究者が共同研究で作品読解に取り組むという作業のワークショップ体験をも想定している。そのため、実際の研究者が共同研究をする際のプロセスや環境をできるだけ整えてやりたいと考えた。
 そこで、今日は共同研究者の相手決めから始めた。当初、グループ分けはこちらで指定してしまおうかとも考えたが、いや、共同研究者として意に添わない者を選ぶことは実際にはあり得ないな、と考え直し、グループ決めもすべて生徒に任せることにした。13章を割り当てるので13グループが必要になる。そこで、2〜4人のグループを13作ることだけを指示してグループを組ませた。このクラスは38名しか在籍がないため、残念ながらできたグループは12であった。いったん組んでしまうとさらに分けるのはなかなか難しい。そこで、12グループのまま行くことにした。担当のない章は私が担当してやろう。
 次に担当する章を決定させたが、これは「あみだくじ」である。何しろ生徒はまだ「こころ」本文を読んでいない。その状態で担当する章を決めるのは無謀なのだが、時間的制約もある。また、どの章であっても、むしろ意外な章に意外な発見が隠されているものだ。それを期待して、班長にくじを引かせる。その結果、肝心要の最終章が余ってしまった。ここはKが自殺するところではないか。どこかやりたいグループはいないか、と声をかけたところ、女子のグループがぱっ!と手を挙げてくれたので、めでたくそのグループに担当してもらうことにする。
 グループ分けからとても活発な雰囲気となった。もう明日にでも始めたいところだが、修学旅行を挟んでの実施となる。さて、このモチベーションを継続してくれるかな。研究作業はすべて図書館で行うことにした。そこで、図書館には参考図書を用意してもらうよう、司書の方にお願いした。そうすると、修学旅行という期間は資料準備に都合がよいのだけれどね。