山月記の授業

 9組での授業。山月記の3段落目の読み、李徴が虎になった理由を問い、そのことをいかに悲しく思っているかを語る場面である。
 ここはほとんど定番通りに読み取りを進めていった。本文に2カ所ある「恐ろしい」という語から、李徴が虎になったことを恐ろしく思うこと2点を挙げさせたり、「古い宮殿の礎が土砂に埋没するように」の比喩の意味を確認したり。
 それらの読み取りの後、もう一つの見方を提示する。李徴は「この気持ちはだれにも分からない。だれにも分からない。おれと同じ身となった者でなければ。」と言うが、その姿はある意味で唯一絶対の姿であり、孤高の姿である。したがって、李徴はある意味においては、彼が人間だった時になりたいと思っていた姿に、今まさになれたのではないか、という読みである。そこから、彼が「毒虫」なのではなく「虎」に変身した意味があるのではないか。そう生徒には問いかけてみた。
 山月記からさまざまな小説の読み方を感得して欲しい、そして、作品の多様性、多面性を味わって欲しいと思っている。その一つの形を示せたかな。