1点重視の授業

 2組の現代文では1点重視の授業を行った。生徒に進度を確認したところ、予想していたより遥かに遅れていることが判明した。そこで、導入部の部分を何とか1時間で終わらせようと考えた。
 ストーリーの概要と下人の「ある強い感情」と「あらゆる悪に対する反感」に至るまでの流れをしっかり確認させる。そして、その「ある強い感情」を下人が持ったのは何故か、また「あらゆる悪に対する反感」を持ったのは何故かという2点の質問のみに絞って、生徒に考えさせ、指名して板書させ、説明した。結果的にはこれがよかったようだ。
 ある生徒は「ある強い感情」について、「かわいそうな死人に対するあわれみから」のように書いた。それを見ていた他の座っている生徒たちが、「それは老婆が死人の髪の毛を抜いているのが分かる前の時じゃない?」などと話しをしており、中にはそう書いた生徒に、「違うぞ」などとアドバイスする者もいた。そのようにして、生徒自身が自分たちで文章を読み取り、友人の意見に対して批評していたのだ。これは非常によい。私はこうした姿を期待していたのだよ。
 この問題に関する検討で授業時間は残り5分。次には「松の木切れのように」という表現から、下人の正義感の脆弱さを指摘する難題が待っているのだが、こちらで板書してまとめてしまう。でも、生徒たちは集中して聞いてくれていたようだ。
 やはり、授業の核として1つないし2つを設け、それについて徹底的に考える、というスタイルは、時間の制約のある中で一番効果的な現代文の授業形態のようだ。これをいくつか続けることで、生徒の批評力を養えるといいなぁ、と思う。