「舞姫」の授業

 6組と7組の授業。7組は一番進度が早く、エリスとの出会いの場面を読んでいる。プリントを使って生徒に読み取りをさせたのだが、含意を含む会話の続くこの場面を正確に読み取るのはさすがに難しいらしく、とんちんかんな答えが続く。仕方なく文章に沿って言葉を補いながらストーリーの流れをまとめていく。
 この箇所はエリスの置かれた「酷い」立場の説明をしなければならないのだが、口にするのに抵抗のある語句を連発せねばならず、なかなか説明しづらい。次の場面はもっとそうだしね。こういう時、文語文の表現は便利である。文語文というベールに隠されて、あからさまに語ることがなくなるからね。
 今日の生徒の感想と私のコメント。

  • 近代文明への興味・関心よりも、偉くなることを重視する野心にはあまり共感できないと思った。
    • 興味はあったけど、のめりこむことを恐れたのだろうね。
  • 最初の一文を深読みしたけど、作者が書く時に本当にあそこまで考えて書いているなら、相当すごいことだと思った。
    • 作者の考えていないところまで読めるのが読者の特権ですよ。
  • 鴎外は自分と主人公を重ねてこれだけほめているので、すごい自信家だと思った。
    • まあ、豊太郎は完全な作者自身ではないですからね。
  • 豊太郎が今まで勉強・学問に励んできた理由に、大物政治家になるため、というのはないのでしょうか?
    • 「模糊たる功名の念」ですから、はっきりとしたものではなく、漠然とそう思っていたのでしょうね。
  • 劇的な「自我の目覚め」を経験したことはありません。だんだんと目覚めているのか、それともまだ経験したことがないのかよく分かりません。「自我の目覚め」とは劇的なものなのでしょうか。
    • 私の場合は「振り返って考えてみれば……」でしたよ。