レビュー・マトリックスとコンテンツ・マトリックス
先週の金曜日の午後から昨日まで、仙台に行っておりました。聖書の福音を語り、聖書の学びをする奉仕です。守られて感謝でした。
さて、改めて今週の始動です。今日のゼミでは、学生たちに文献調査を進めさせました。先週のゼミでは、各自の研究テーマに沿った文献を探索させました。今日はその文献を読み、理解を進める時間としました。
この際、単に文献を読んで理解しろ、と言ってもそう簡単にできるものではありません。また、研究のための文献購読とは、ただ文献の内容を理解すれば良いものでもありません。研究のための文献購読とは、自分の研究に利する情報を得るために行うものです。そこで、それを意識付ける方法として、「レビュー・マトリックス」というものがあります。
- 作者: ジュディスガラード,Judith Garrard,安部陽子
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2012/05
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この方法では、設けた列の項目に関する情報だけを文献から引き出すところが重要ですね。つまり、文献を「読む」のではなく、文献を「利用する」のです。文献の著者は、確かに自分の伝えたいものを持ち、それを表現するべくいろいろに工夫して文献を書いているでしょう。しかし読む者は、著者が書いたもの全てに付き合う義務はありません。特に文献調査という行為は、自分の研究に利する情報を得ることが目的なのですから、それ以外の情報に付き合うくらいなら他の文献を読んだ方がマシです。このレビュー・マトリックスは、そうした文献調査の方法を明確に形に表していると思います。
思えば、私が博士課程の時、無意識のうちにこのレビュー・マトリックスを実践していたように思います。研究を進めるために幾つかの文献をまとめなければならなくなった時、私はただ3つの観点のみで文献から情報を抜き出していきました。それは「問題意識(リサーチ・クエスチョン)」、「研究の方法」、「結論」です。特に、リサーチ・クエスチョンと結論とがきちんと対応し、かみ合っているか、という点に注目していきました。私の指導教官は、この2つがきちんとかみ合っているのが良い論文である、と教えてくれたからです。
こうしたことを学生にさせたいのですが、そのためにはどんな項目を列に設けるか、ということがとても大きな課題となります。それを考えさせるにはまだ時間がかかると判断し、今日は「コンテンツ・マトリックス」をさせました。
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コンテンツ・マトリックスは、1行に1文献というのは変わらないのですが、各列には文献の目次の項目がそのまま入ります。すなわち、第1列には書誌情報、2列目には出版年、そして3列目以降は「第1章」、「第2章」……と、各章の小見出しを書いていきます。そして、その小見出しの下に、その章の要約をメモしていくのです。
この方法の良さは、列の項目をいちいち考えなくても良い、ということです。そして、文献の各章の小見出しを書いていきますので、文献全体のあらましを一望できることになります。そして、手元にある多くの文献を行ごとにまとめていき、それが終わったら、共通する内容が書いてある箇所を見つけ出して、各文献間の関連を考察することができます。この方法も、文献の全体像を意識することができるという点で良い方法です。
今日は、学生にこのコンテンツ・マトリックスの方法を伝え、マトリックス表を書いたプリントを渡して、そこに記入させていました。本当はコンピュータの表計算ソフトで行えばいいのでしょうが、今日はお試しということもあり、紙ベースでまとめさせました。さて、学生たちはどのようにまとめていったでしょうか。確認するのが楽しみです。
これらはまさに、『本を読む本』に言う「シンメトリカルな読書」ですよね。そして、学校教育の場においてシンメトリカルな読書を行わせるためには、論文執筆のための文献調査をさせることが良いのではないかと思います。
- 作者: J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山滋比古,槇未知子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/10/09
- メディア: 文庫
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