胎動、そして期待

 久しぶりのブログの更新です。今年度はいろいろな刺激を受け、ブログをしっかり更新していこうと思っていたのですが、1年の終わりにふり返ると、やはりそんなには更新できていませんでしたね。以前よりも更新のエネルギーが湧いてこないのが最大の原因ですが、授業のあるときは、あまりの忙しさのためにブログが更新できませんでした。今、ようやく様々な仕事の山を越え、一息つける頃となりました。
 この時期、新たに取り組もうとしていることがあり、そちらにも十分時間をかけたいところです。これはしかし、英語の文献を読まなければならないこともあり、なかなか進ませることができずにいます。とりあえずは日本語の文献をしっかり読んで、その上で英語の文献を探索すべきかなぁ。あまり時間の余裕もありませんし、こちらはどんどん進めていきたいですね。
 他にも、今年の研究活動のまとめをしたいです。今年は初の試みとしてブッククラブを授業に取り入れました。その結果をまとめたいと思っています。ブッククラブの効果については書籍や文献などに言及されています。しかし、それを定量的に、あるいは質的に、分析したものはあまり見受けられません(英語圏の文献にはあるのかなぁ…)。私の授業では、ブッククラブの授業の前後にアンケート調査を実施し、さらに終了後にはレポートを書かせました。それらを量的に、また質的に、分析したいと思っています。アンケートの文言を基にしたテキストマイニングを、別の論文を書くときに試してみたので、その手法を使ってみようと思います。テキストマイニングは決して万能ではないことがわかりました。しかし、アンケートの文言のいくつかを拾い上げてこれこれの結果が出た、と言い立てるよりは、はるかに客観的な結果を提示できると考えています。
 来年度への仕込みもしたいですね。来年度の新しい試みとしては、ライティング・ワークショップを授業にしっかり導入しようということです。私の「国語」の授業はワークショップを取り入れているのですが、その内容はリーディング・ワークショップの方に大きく偏っています。あの授業では、本を読むことの楽しさを知ることはできても、文章を書くことの楽しさは味わえないだろうなぁ、というのが、3年間実践しての反省です。そこで来年度では、ライティング・ワークショップを年間通して授業に取り入れ、学生に作品をどんどん書かせたいと思っています。そのための仕込みをしなければなぁ。
 他に、様々な関わりも増えてきました。今年度は新潟県高教研図書館部会でリーディング・ワークショップの体験講演を行いました。これは、私にとって大きな意義がありました。リーディング・ワークショップもライティング・ワークショップも、何より経験してみなければ指導できません。私の経験値を積み重ねることに役立ったと思います。また、ビブリオバトルについても私に照会があります。幸い、昨年度と今年度に学生にビブリオバトルをさせることができ、こちらの経験値も多少は積んでいます。少しはお役に立てるかなと期待しています。
 さらに、今年度に行ったリーディング・ワークショップの公開講座は、私にとって計り知れない影響がありましたね。これの続編を来年度も行おうと構想を練っています。実現できるといいな。
 ということで、様々なことが胎動している今日この頃です。これらが実を結んでくれることを願っています。

絵本の読み聞かせの実践

 時機を逸しているのも甚だしいですが、明けましておめでとうございます。2017年になって最初のブログ更新です。本当はもっと書きたいことがいくつかあるのですが、時間をなかなか取ることができず、更新が滞ります。ただ、無理をしないでやっていこうと思います。もちろん、発信することの重要性はよく心得ておりますので、頑張って発信していきます。

 さて、私の担当する授業では絵本の読み聞かせを進めています。昨年末に「絵本探究」の授業をし、絵本の作者や時代背景、絵の魅力や特徴を学生自身に調べさせ、発表させました。その内容を受けて、今度はいよいよ読み聞かせを実践していきます。読み聞かせの方法について確認した後、学生に自分が読み聞かせたい絵本を選ばせ、それを3〜5人のグループ内でお互いに読み聞かせ、自己評価・他者評価をさせます。こうすることで、少しでも絵本の読み聞かせに自覚的になり、他者の読み聞かせ方を通して自分の読み聞かせについてメタ認知してくれればな、と思います。また、様々な絵本を知る機会にもなるでしょう。
 自己評価・他者評価をさせるにあたり、設定した評価項目は以下の通りです。

  1. 絵本の持ち方・見せ方:絵本を見やすいように持っていたか、読む途中でプレたりしないか
  2. 声・抑揚・スピード・間:お話の内容・展開を考慮して、読むスピード、抑揚、声色、間など、工夫していたか
  3. 聞き手の反応への対応:聞き手の方を見て、聞き手の反応に応じて読み方を工夫していたか
  4. お話の伝わり方:総合的に見て、お話の内容・ストーリーが聞き手に伝わったか

 これらの観点ごとに5段階評価をします。最高20点になります。これを、まず自己評価し、次に友人たちと相互評価させました。
 学生たちは楽しそうに読み聞かせに取り組んでくれました。
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 最後に、各グループで上手に読んだ人を選び出してもらい、その中から3人にみんなの前で読み聞かせてもらいました。自分から名乗り出てくれたクラスがあり、嬉しかったです。
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 学生たちのふりかえりでは、自分自身の読み聞かせに対する反省と自負、また友人たちの読み聞かせから学んだことがよく書かれていて、よい学びができているとうかがわせるものでした。

 残り2回の授業では、紙芝居の演じ方に取り組みます。ほぼ同様の方法で、学生たちに紙芝居も実践させます。

絵本探究の授業④:ポスター発表会の実施

 今年も今日で御用納めですね。私も、今年で大学に出るのは今日で最後にします。このブログは私が高校教諭時代から書き始め、毎日のように更新していたのですが、短大に場を移してからはなかなか更新できずにいました。それが、今年はだいぶいろいろなことを書けたように思います。これからも自分の研究や授業実践について、できるだけ書いていきたいと思います。
 さて、先週の授業では絵本探究の発表会を行いました。そもそも、この絵本探究の授業は以下のようにして4回にわたり行いました。

 第1週 6種類の絵本を全員が読み、気づいたことをまとめる。
 第2週 自分が深く探究したい絵本を1種類選び、同じ絵本を選んだ学生とグループを組んで、探究する内容を分担して探究を始める。
 第3週 各自が探究してきた内容をポスターにまとめて、ポスター発表の準備をする。
 第4週 各グループによりポスター発表をし、相互評価する。

 先週はこの第4週でした。学生たちは何とか時間を都合して、横に置いた模造紙2枚を上下に貼り合わせたポスターに自分たちが探究した内容をまとめてきてくれました。1種類の絵本に対して2グループが(原則として)ありますので、発表を前半と後半に分け、それぞれ25分間でポスター発表会を行いました。教室の壁6箇所に張り巡らされたポスターはなかなか壮観です。学生たちはそれぞれ、いろいろに工夫してきてくれました。
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 私は彼らのポスターのすべてを見ました。確かに、まだまだ情報量は少ないでしょう。そして、「探究」と呼ぶにふさわしい深みまで調べていたかというと、まだまだかもしれません。しかし、これらの絵本についての情報をほとんどもっていなかった彼らが、この授業を通してここまで絵本の作者や時代背景や内容について調べ、考え、まとめたことを素直に評価したいと思います。学生たちはとても良くやってくれました。
 また、この発表会を通して、自分たちが選んだもの以外の絵本についても様々に知ることができたのではないでしょうか。第1週で学生たちは6種類すべての絵本を読んでいます。ですから、各グループの発表を聞くことで、自分たちが読んだ絵本のさらに深い内容を、同じ学生同士で教え会うことができたわけです。この意義は大きいと思います。
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 この授業を通して、学生たちは絵本について少し認識を改めてくれたのではないでしょうか。今、この授業への感想を含むレポートを課していますので、そこでの彼らの声が楽しみです。自画自賛ですが、よい授業ができたと思っています。

ゼミ生の研究は進んでいるのかな

 今日は2年生のゼミがありました。2年生はゼミ生の中でグループを組んだり、個人で取り組んだりして、自分の研究に取り組んでいます。私はゼミの運営をかなり自由にさせているので、学生は楽しそうにゼミの時間を過ごしていますが、そのツケが今、回ってきているようです。そろそろ研究のまとめをしていかなければならないのですが、進んでいるグループも停滞しているグループもあり、悲喜こもごもです。
 今年もゼミの運営はあまりうまく行っているとは言えません。停滞しているグループがいるということは、私の彼らの研究指導が不十分だということを示すのでしょう。折に触れて指導はしているのですが、まだ詰めが甘いのでしょうか。ゼミ運営については、今年で3年目になるのですが、なかなかうまく行きません。
 ただ、今年は彼らに作成させるポスター資料について、先日紹介した言葉指導法Ⅰの授業での方法をゼミ生にも紹介することで、今までよりもヴァージョン・アップさせてやれそうだという見通しは付きました。少しずつ少しずつ前進、というところでしょうか。

絵本探究の授業③:調査のまとめ

 今週の言葉指導法Ⅰは、「絵本探究」の3回目。先週、各自が調査した内容を模造紙でまとめる作業をさせました。模造紙を2枚つなげさせ、そこにポスター発表の要領でポスター資料を作成させました。来週はそれを用いて発表会です。
 ポスター資料を作成させるにあたり、ちょっと工夫しました。何も言わずに模造紙にまとめさせると、彼らは調べてきた文言を箇条書きでダラダラと書き連ねるだけです。そのような発表資料は見にくくて、しかも誰も読みません。できれば、学会でのポスター発表の資料にようにレイアウトを意識し、グラフィカルに資料を構成して欲しいと思っていました。そこで、下記のサイトを参照して、私がまずはプレゼンをしました。
伝わるデザイン|研究発表のユニバーサルデザイン
 そうしたところ、さすがはビジュアル世代の学生たちです。あっという間にコツを理解し、タイトルを大きく書き始めました。
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 さらにはイラストを入れて、絵本の楽しさを表現し始めました。
 このグループは、「絵を見て気づいたこと・絵の魅力」の項目で、『ちいさいおうち』に出てくる家のイラストを模写して、自分たちの伝えたいことを表現しています。上手です!
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 他のグループもいろいろ工夫してくれています。これは来週の発表会が楽しみになりました。

外の世界に向く視点を

 先々週から言葉指導法Ⅰの授業では「絵本探究」という学習をしています。これは帝京大学の杉本先生の実践に触発され、先生の実践を私なりに本学の実情に合わせて実施しているものです。
 6種類の絵本を用意し、その絵本のどれか1冊を学生に選ばせ、その絵本について徹底的に探究させる、というものです。こうすることで、絵本そのものや作者・その背景などについて知ることができます。そして、その絵本の1冊1冊には大きな背景があるのだということを実感させることで、学生が子どもたちに絵本を読み聞かせたり、絵本を選んだりするときに、今までよりも心を込めて出来るようになるだろう、ということを意図しています。
 先週までに2回の授業を行いました。そして先週は6種類の絵本の中から1冊を学生各自に選ばせ、その絵本について探究させました。私が彼らに探究させる点として指摘したのは以下の4点です。

  1. 絵本の作者について
  2. 絵本が作られた時代背景について
  3. ストーリーの面白さについて
  4. 絵そのものや本としての特徴・面白さについて

 この4点について取り組ませたのですが、はたと問題にぶつかりました。2番目の「絵本が作られた時代背景について」調べることになった学生の多くが、「その絵本が作られた年代に起こった出来事」を羅列していたのです。
 私は「時代背景」という言葉を使えば、その絵本が作られた時代の出来事が絵本作成に与えた影響や、作者の人生においての出来事が絵本の作成に与えた影響、などについて調べてくれるものと思い込んでいました。しかし、彼らの多くは単純に、「絵本が作られた年代を調べ、その時代に起こった事件や出来事」を調べていたのです。つまりは、絵本との関わり、という視点を彼らが持っていなかったのです。
 これは私にとって少々ショックでした。と同時に、私の指示の不十分さも教えられました。実は『ギヴァー』のブッククラブをやっているときから感じていたのですが、学生たちは『ギヴァー』の内容を現実の自分たちの社会と関連づけて考えるという視点をほとんど提出しませんでした。皆無と言ってもいいかもしれません。そうした姿勢が、この絵本探究の授業でも現れているのかもしれません。
 これは一つの「発見」ですね。そして、それに対してどう対処するか、私の教員としての腕が試されているように思います。

『クリエイティブの授業』

クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST

クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST "君がつくるべきもの"をつくれるようになるために

 吉田新一郎さんから勧められた上記の本を読みました。これは面白い! お勧めです。
 原題は『STEAL LIKE AN ARTIST』(アーティストのように盗め!)で、こちらの方が刺激的ですね。また、本書の内容をよく示していると思います。本書は何かを新しく作ろう、書こうと思うけれど、それは「オリジナルでなければならないのでは?」と考えて手が止まってしまう人(主に私?)にうってつけです。
 本の扉には「芸術とは盗むことだ」(パブロ・ピカソ)、「未熟な詩人はまねるが、熟練した詩人は盗む。無能な詩人は盗んだものを壊すが、有能な詩人はより優れたもの、少なくとも違うものへと変える。」(T.S.エリオット)の言葉を掲げ、創造するとは盗むことなのだと教えてくれます。意表を突く言葉ですが、しかし、多くの革新的なアイディアや創造的な仕事とは、そのように他者の今までの仕事やアイディアを参考にし、自分なりに吸収し編集してアウトプットしたものです。人は他に何の関わりもないものを創造することはできません。人は「無から有を創造する」ことはできないのです。創造にはある元ネタがあり、それをいかに自分なりに取り込んで表出するかにあります。スティーブ・ジョブズスタンフォード大学での卒業講演にもあったように、ジョブズMacを構想したのは、彼が大学でタイポグラフィの勉強を(モグリで)したことが基となっています。人生における点と点はいつかつながりをもつようになる、肝心なのはその点を人生の中にもつことだ、ということではないでしょうか。
 この本の中から、面白い!と思った箇所をいくつか抜き出します。

  • 小説家のジョナサン・レセムがこんなことを言っている。「何かを“オリジナル”と呼ぶやつは、十中八九、元ネタを知らないだけなんだ」p15
  • “ネタ帳”を持ち歩こう。その名のとおり、他人から盗んだネタを記録しておくためのファイルだ。……盗みたいものが見つかった? ネタ帳に記録しよう。アイデアの限界? ネタ帳を開こう。p30
  • 作曲家のニック・ロウは言っている。「まずは自分のヒーローの全作品を作りなおそう」と。といっても、1人のヒーローからまるまる盗んじゃいけない。ヒーロー全員から盗むんだ。作家のウィルソン・ミズナーは、「1人の作家をコピーするのは盗作だが、何人もの作家をコピーするのは研究だ」と言ったのを覚えている。かつて、漫画家のゲイリー・パンターがこんなことを言ったのを覚えている。「君がたった1人の影響しか受けていなければ、君は第2の○○と呼ばれるだろう。だが、100人から盗んでしまえば、“君はオリジナルだ!”と言われるのだ」p44
  • 僕たちがアートを作るのは、アートが好きだからだ。僕たちがある作品に惹かれるのは、その作者に刺激を受けるからだ。突き詰めていえば、フィクションはどれも“ファン・フィクション”なんだ。だから、いちばん大事なのは、知っていることじゃなくて、好きなことを書くことだ。自分のいちばん好きなストーリー、自分の読みたいストーリーを書こう。人生や仕事も同じ。筋書きに迷ったときは、こう自問すればいい。「どうすればもっといいストーリーになるか?」p55
  • 今、僕はどの仕事でもこの方法を使っている。僕の仕事場にはデスクが2台ある。1台がアナログ用で、もう1台がデジタル用。……君も試してご覧。オフィスがあるなら、作業スペースを2つに分けるんだ。1つはアナログ用で、もう1つはデジタル用。アナログ・スペースでは、エレクトロニクス類はいっさい禁止だ。1000円持って近所の店の文房具コーナーに行き、紙、ペン、付箋紙を見つくろってこよう。アナログ・スペースに戻ったら、さあ、図工の時間だ。紙に落書きをして、切り貼りしよう。作業中は座っちゃダメだ。紙を壁に貼って、パターンを探す。デスクに広げて、えり分けよう。p68
  • 僕が少ない人生経験で学んだことが1つある。本当にうまく行くのは“副業”のほうだということだ。僕の言う“副業”というのは、今まで気ままにやっていると思っていたこと、単なる遊びでやっていると思っていたことだ。本当に大切なのはそっちだ。魔法が起こるのはそのときなんだ。たくさんの仕事を同時進行させて、気ままに切り替えられるようにしておくといい。こっちの仕事に飽きたら、あっちの仕事へ。あっちに飽きたら、こっちへ。“ぐずぐず”をエネルギーに変えよう。p73

 読んでいて勇気づけられる言葉がポンポンでてきます。ワクワクしてきます。私などは単純ですから、さっそく学校で余っている机を1つ調達して自分の研究室に置き、アナログ用とデジタル用に作業場を分けました。このアナログ・スペースで、これからどんな仕事ができるか、楽しみになってきます。
 この本を読んで、筆者のファンになりました。そこで、筆者の次の著書を入手しました。

クリエイティブを共有!  SHOW YOUR WORK!

クリエイティブを共有! SHOW YOUR WORK! "君がつくり上げるもの"を世界に知ってもらうために

 また、吉田さんは、「PLC便り」というメールマガジンで次の本も勧めておられました。私はさっそく注文しました。
逆転の教育: 理想の学びをデザインする

逆転の教育: 理想の学びをデザインする

 人から本を紹介してもらうのは、良書に出あう有効な方法の一つです。良い読書ができそうです。